「働く」ことを軸に障害者のノーマライゼーションを目指す
大阪府箕面市稲1丁目11番2号

ともに働く現場から ② 「言葉でのコミュニケーションが難しい場合」

今回は、言葉でのコミュニケーションが難しいNさんと、一緒に仕事をする事例について、ご紹介します。

Nさんは、こちらが話す言葉の意味を、ある程度は理解出来ているようですが、自分の気持ち等を言葉で上手く伝えることが出来ません。
単語で話すことは出来ますが、長い文章を話すことは難しく、こちらからの質問には必ず「はい」と答えていて、
「いいえ」とは今まで1回も言った事がないというのです。
そのため、Nさんが感じていることや体調不良等を、言葉から知ることが出来ません。

そこで、Nさんを採用して仕事を始めてもらうにあたっては、※職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を活用しました。
Nさんの気持ちや体調不良等について、言葉以外で、何か知る方法がないのかを考えるためです。
この支援は、Nさんの同僚のうち、職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修を修了した職員と、
地域障害者職業センターに所属する職場適応援助者(ジョブコーチ)とが連携して行っています。
しかし、支援期間の6か月間のうち、半分の期間が過ぎた現時点では、Nさんとのコミュニケーション方法をまだ作り出せてはいません。
今後も引き続き時間をかけて、Nさんの気持ちや体調等を、例えば文字やイラスト等で示してもらうなど、
Nさんが表現しやすい方法を探していきたいと思います。また、現在は補完的な方法として、
何かあればご家族との連絡ノートで体調等の把握をするようにしています。

現状、Nさんは苦手な場面や、否定的な言葉には、涙を流されるので、それがNさんの気持ちのサインとなっています。
例えば作業中に、Nさんが押す台車を人や壁等にぶつけてしまった時に、「台車をぶつけてはいけません」と伝えた時等です。
そのため、現在は、見本を示したり、ゆっくりと穏やかにポイントを絞って一つづつ伝えるようにしています。
また、こちらからの声かけに納得がいかないような時には、「うーん」というような言葉で返されることもありますが、
その後時間はかかるものの、翌日には納得されたように、「○○します」と話されることもあります。
また、体調不良の時は、しんどそうにしていたり、普段はしないのに休憩時間に横になったりしていたので、
同僚が声をかけて検温をしてみて、初めて微熱があることがわかった事もありました。
他にも、作業ズボン(制服)のウエストのゴムが緩んでしまって履けなくなっていても、自分からは伝えることができず、
私服のズボンを履いて作業しようとしたり、担当する場所の作業が終わっても「終わりました」と伝えられずにいたりするので、
伝える手段を見つけることは今後の課題です。
そのため、同僚は自分も作業をしながら、目配りをしてNさんの様子をみており、タイミングをみて声をかける等の支援を継続しています。

実はこのような支援は、重度な障害のある人とともに働く、箕面市障害者事業団の現場では、これまでも当たり前の支援として行ってきたことでした。
このように、その人の苦手な部分について、同僚からの支援で補うことが出来れば、重度な障害のある人と、ともに働けるという実践をこれまで続けてきました。
今後も障害特性への配慮や職場の環境改善にも目を向けながら、Nさんが安心して働けるようサポートできればと思います。


 花の植え付け作業中のNさん(いずれも上段)

※職場適応援助者(ジョブコーチ)
  障害者が職場に適応できるよう、障害者職業カウンセラーが策定した支援計画に基づき職場に出向いて直接支援を行う者。