「働く」ことを軸に障害者のノーマライゼーションを目指す
大阪府箕面市稲1丁目11番2号

ともに働く現場から③ 「グループホーム入居にあたっての相談支援事業所との連携」

これまで家族と同居生活しておられた障害者職員のIさんが、急遽グループホームへ入居することになり、
相談支援事業所と連携して支援した時の事について、お話しをしたいと思います。

Iさんは、勤続25年になる50歳代の職員です。採用当初からずっと、実家で家族と暮らしていたのですが、
家族の状況に変化があり、同居の家族による生活面でのサポートが受けづらくなり、
在宅で生活していくには、様々な課題が生じるようになってきました。
相談支援事業所も状況を把握してはいたものの、急なことであったため、
すぐに入居できるグループホーム等を見つけることは出来ませんでした。

Iさんは、重度の知的障害があるため、食事準備や身の回りのことを自分でするのは難しく、家族に頼っていたため、
相談支援事業所へお伝えをして対応策を考えてもらう事となりました。しかし、翌日の食事の手配をすぐに考えなくては、
Iさんの生活がたちまち立ち行かなくなる、緊急事態となっていました。

そこで、相談支援事業所の対応策を待つ間の苦肉の策として、終業後に同僚がIさんと一緒に職場の隣にあるコンビニへ行き、
その日の晩ご飯用の弁当や、翌日の朝食用のパンの買い出しの支援をすることになりました。
他には、髭剃りなどの身だしなみを整える支援も必要だったので、相談支援事業所の職員が、
Iさんと一緒に電気髭剃り機を買いに行き、その後は同僚が対応することにしました。

しばらくして、対応策を検討してもらっていた相談支援事業所から、晩ご飯用に、宅配弁当を利用してもらう提案があり、
早速注文を開始することで、夜の食事の問題は解決しました。
しかし、朝食用のパンの買い出しや、髭剃りについての同僚からの支援については、まだしばらく続きました。
ただ、仕事がない土曜は、同僚が支援することが出来ないため、相談支援事業所にショートステイ利用の調整をしてもらい、
日曜は、偶然出会った同僚が食事の買い物を手伝ったりして、何とか凌いでいました。

そんな日がしばらく続いた後、ようやくグループホームの入居者募集の情報が、相談支援事業所に舞い込みました。
すぐに相談支援の担当者と同僚とで、Iさんの親族へ情報提供をし、Iさんはグループホームに体験入居されて、
様子をみましたが、新しい環境にも徐々になじめたようでした。その後、入居について了承を得ることができ、
グループホーム利用へとつなぐことが出来ました。

そしていよいよグループホームへの引っ越しをすることになりましたが、必要な家財道具の買い出しや、
運搬作業までを、相談支援の担当者と職場の同僚とが、連携をして行いました。

こうしてグループホームから出勤する事になったIさんですが、通勤に際しては、まずは通勤練習が必要でした。
これまで、実家から職場までの通勤には自転車を利用していて、グループホームからの通勤にも、同じく自転車を利用するのですが、
グループホームからの通勤ルートはこれまでほとんど通ったことが無い道だったため、まずは通勤ルートになる道を覚えることからはじめました。
これには、相談支援の担当者がIさんの出勤前にグループホームまで行き、別の自転車に乗って同行して道案内することで、
通勤ルートを覚えてもらいました。
その後は、相談支援の担当者がIさんの後ろを自転車でついて行き、一人でも道を間違えることなく通えることを確認し、
Iさん一人での通勤が始まりました。

ところが、当初は順調だった出勤でしたが、そのうち大幅に遅刻するようになってしまいました。
その原因を探るべく出勤時の様子を見ていると、朝、職場へはグループホームのある方角から来るはずが、
実家のある方角からやって来ていました。どうも、グループホームを出た後に、職場を通り越して、
実家に行ってしまっているようでした。

その理由は不明でしたが、実家へ行くことがルーティーン(日課)になってしまっているようで、
それを止める事は難しいようでした。
そこで、グループホームへ、自宅に寄る時間を見越して、早めの時間に送り出してもらうように依頼をした上で、
併せて、実家に住む親族に、Iさんが朝、実家に寄った場合は、職場へ行くように促してもらうようお願いをしてみました。

すると、その後からは、遅刻することは無くなりました。

こうして、ようやくグループホームへの入居が一段落し、生活面が安定したIさんは、
現在、仕事面でも安定した力を発揮しています。

職業生活の継続のためには、生活面での安定が重要です。
しかし、職場として関わることが出来る部分は限られ、またその全てを福祉サービスで補完することも現実的には難しい面があります。
そこで、他機関や家族と連携を取ることは大変重要な事になってきます。
また、Iさんの場合は、様々な事情により、急遽グループホームへ入居することになったのですが、
可能な限り、自立生活について計画的に進めておく事が出来れば、本人や家族、支援者への負担を軽くすることが出来るのではないかと考えています。