一般財団法人箕面市障害者事業団(以下「本事業団」という。)は、障害者の職業的、社会的自立を促進するとともに、事業を通して基本的人権の尊重と市民文化の高揚を図り、もって市民福祉の向上に寄与することを目的として設立された公益法人です。
令和3年度の一般財団法人箕面市障害者事業団(以下「本事業団」という。)は、新型コロナウイルス感染症の対策に加え、近年直面している財政危機を乗り越えるべく、収支改善に向けた取り組みを進めてきました。
以下に、令和3年度事業計画において重点項目に位置付けた3項目について、総括します。
ここ数年は、事業収支の赤字による積立金の取り崩しが続いていたことから、財政基盤の再構築に向け、法人全体で支出抑制と収入確保の取り組みを強化しました。
①2号職員の給与制度見直し
厳しい財政状況のもと、前年度に取りまとめた新たな2号職員の給与制度に基づき、昇給額の抑制と賞与の減額など、支出抑制をはかりました。
②雇用支援センターの収入拡大
利用者数の増減が収入額に直結することから、多くの人に利用されるようにPR活動を積極的に展開しました。本事業団ホームページのブログで障害当事者の利用ニーズに沿った支援プログラムを紹介するとともに、関係機関への訪問や、近隣スーパーや鉄道駅にパンフレットを配架させていただくなど、新たな利用者の通所につなげました。
また、本年度から、喫茶るうぷメイプルホール店を活用した就労継続B型事業のプログラムを本格的に開始しました。接客などの店舗作業、買い物や調理体験などは、企業就労を目指す事前トレーニングに位置付けています。これまで実施してきた就労移行の支援プログラムと組み合わせることで、幅広い利用ニーズに対応できるようになっています。
③収益事業(自動販売機設置、喫茶店運営)の収入拡大
関係機関との調整により、市内の公園5箇所に6台の新設を含め、合計13台の自動販売機の新設を実現しました。
喫茶店の収益改善をはかるため、商工会議所からの助言のもと、『顧客アンケート』を実施し、結果をメニュー構成に活かしました。また、平成31年10月の消費税増税時に据え置いていた価格を、原材料費の上昇も加味した価格に変更するなど、収益アップに取り組みました。
以上の取り組みの結果、本年度の事業活動の収支は、1,227万円の赤字ですが、前年度比では、約1,020万円の改善となっています。
さらなる収支改善を図るため、本年度の収支状況を分析し、次年度以降の取り組みを強化していきます。
「重度障害者の働く場づくり」は、本事業団の原点です。勤続32年を迎えた設立当初からの職員を含め、障害者職員13名とともに実践活動を続けています。
①障害者職員(1号職員)の新規採用
令和3年11月、23年ぶりに障害者職員を新規採用し、緑化部門に配属しました。採用にあたっては、現場での実習、面接を実施し、それらの結果を踏まえ、地域の障害者関係団体等で構成する本事業団採用検討委員会で決定しています。
採用後は、職場適応援助者(ジョブコーチ)支援制度を活用し、本事業団職員と地域障害者職業センターのカウンセラー、ジョブコーチと連携し、必要なサポートを行っています。
②障害者職員への就労と生活両面での柔軟な対応
加齢にともなう疾病や体調の変化により、従来の業務を続けることが困難となった障害者職員には、必要に応じて勤務時間の短縮や業務内容の変更など柔軟に対応してきました。また、生活面を支援する相談支援機関とも連携し、安心して働き続けられるための環境を整えました。
これまでの実践で培ってきた経験を活かしつつ、障害者職員の体力面、健康面にも配慮した重度障害者の就労継続のリーディングケースとなるよう、今後も取り組みを深めていきます。
障害者の企業就労をすすめるとともに、市内事業所の業務の確保や間接支援を拡充するため、地域関係機関との連携を深めています。
①地域の関係機関、相談機関との連携による支援の展開
障害当事者の多様なニーズに対応すべく、本事業団の就労支援や相談支援と、地域の障害者相談事業所とが連携することで、より個別性、専門性の高い支援につながることもありました。
②『(仮称)優先調達事業等調整会議』発足に向けた調整
「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえ、障害者事業所や福祉施設等の収益向上につながる効果的な連携を深めることを目的とした「調整会議」の発足に向け、準備会で意見交換を行いました。
以上のとおり、コロナ禍の中、厳しい事業環境ではありますが、本事業団設立当初からの目的である地域社会におけるノーマライゼーションを推進するため、本年度も職員が一丸となって、既存事業の充実と新たな事業の開拓に取り組んできました。
箕面市議会、箕面市をはじめとする関係機関、関係団体の皆様には、引き続き、変わらぬご支援、ご協力をいただきますよう、お願いいたします。
令和3年度の事業計画に基づき、以下のとおり各事業を実施いたしました。
(1)障害者の雇用促進を図るための調査研究及び相談支援
ア.調査研究
前年度に発行した「30周年記念誌」を関係機関に適宜配布し、本事業団の活動内容を周知しています。
また、ホームページに障害者職員の仕事や暮らしぶりを紹介するブログ(ヒロシのつぶやき)を定期的に掲載し、障害者職員の日常生活等を通し、当該職員の想いを発信しています。時折「俳句」を詠んでいます。一読してみてください。
イ.相談支援
本事業団は、「障害者雇用促進法」や「障害者総合支援法」、「児童福祉法」に基づく大阪府知事、箕面市長の指定を受け、相談事業を実施しています。これらに加え、事業団独自の取り組みとして、市民からの「相談」も本部事務所において、随時、対応しています。
また、「働く体験の機会」を提供する職場実習についても、市内障害者施設等との連携のもと、6名の実習生に対し、合計25日間実施しました。
(2)障害者の職域拡大を図るための助成事業及び職種開拓育成事業
ア.アートショップ「グリーンるうぷ」運営事業
これまで「みのおライフプラザ」内の常設店舗で行ってきた障害者団体や障害当事者が制作した自主製品の代行販売は一旦休止し、今後の店舗スペースの活用方法を検討するため、『(仮称)優先調達事業等調整会議』の開催に向けた準備を行いました。
イ.障害者雇用助成事業
箕面市の補助金を得て、本事業団の職種開拓育成事業の適用を受けた3事業所に対し助成を行いました。
豊能障害者労働センター
障害者の働くパンハウスワークランド
箕面市障害者共働事業所たんぽぽ
ウ.職種開拓育成事業
本事業団職種開拓育成事業実施要綱に基づき、自主的に職種開拓事業を実施する市内障害者事業所に対し、本事業団独自の支援を行いました。
エ.その他のパイロット事業
a)図書館資料修理等業務
箕面市内の福祉施設等の収益や工賃向上を目的に、本事業団が「調整役」となり箕面市教育委員会から業務を受託し、市内2事業所へシェアしています。内容的には、合計2,700冊の補修、998冊のカバー装着、2,460冊の貸出管理用ICタグを再利用するための切り取り作業を、それぞれ円滑に実施できるよう調整しました。
b)みのおライフプラザ清掃業務
箕面市内の福祉施設等の工賃向上を目的に、「みのおライフプラザ」の事務所フロアを中心とした「ごみ回収作業」の一部を本事業団が受託し、市内3事業所にシェアし、通年で237日間実施しました。
c)資源ごみ回収業務
体力面での低下傾向がみられる本事業団の障害者職員をはじめとする重度障害者の職域拡大を目的に、市内の公共施設に限定した資源ごみの回収事業を通年で実施しました。51施設から排出された資源ごみ、新聞紙5,180kg、雑誌84,930kg、ダンボール69,970kg、紙パック8,280kgの合計168,360kg(2t収集車約85台分)を回収しています。
d)その他のパイロット事業
上記のaからcの取り組み以外にも、重度障害者の職域拡大や障害者事業所、福祉施設等の収益向上につながる取り組みとして、民間事業所への物品提供を調整するなどの販路開拓にも努めています。
(3)障害者理解を深めるための啓発活動
ア.障害者福祉啓発講座
箕面市からの受託事業として、広く市民を対象とした啓発講座を年間3回開催し、合計147名の参加がありました。
前年度に引き続き、来場者の間隔を確保できる会場での開催やYouTubeによる同時配信も行っています。特に、コロナ禍にあって、多くの市民が安心して参加できるよう、消毒用アルコールやマスクの準備など、基本的な感染対策を講じて開催しました。
なお、各講座の開催実施結果は次表のとおりです。
全体テーマ:「障害のある人と ともに暮らし ともに働くために」
<1回目>
日 時:令和3年(2021年)12月9日(木)午後2時30分から午後4時30分
場 所:箕面文化・交流センター大会議室
テーマ:「ひきこもる若者の社会的支援策について考える」
講 師:山本 耕平 氏(佛教大学社会福祉学部 教授・JYCフォーラム共同代表理事・社会福祉法人一麦会 理事長)
参加者:44名
<2回目>
日 時:令和4年(2022年)2月3日(木) 午後2時30分から午後4時30分
場 所:箕面文化・交流センター大会議室
テーマ:「発達障害のある人の成人期の支援」
講 師:中山 清司 氏(自閉症eサービス全国ネット代表・合同会社オフィスぼん代表社員)
参加者:70名
<3回目>
日 時:令和4年(2022年)3月7日(月)午後2時30分から午後4時30分
場 所:箕面文化・交流センター大会議室
テーマ:「普通に働き、普通に生きたい 障害のある人の『商い』拡大」
講 師:中崎 ひとみ 氏(社会福祉法人共生シンフォニー 常務理事)
参加者:33名
イ.ホームページ等による情報発信
財務諸表等の公表や本事業団の活動を紹介する情報ツールとして活用しています。
また、重度障害者職員が当事者目線で感じたことを自らブログ記事にし、定期的に発信しています。
加えて、コロナ禍における喫茶店舗の営業状況や啓発講座の開催周知、障害者雇用支援センターでの日々の活動状況などを発信する情報ツールとしても活用しています。
また、本事業団の近況を端的にまとめた「事業団ニュース」を作成し、関係機関に送付しました。
(4)障害者の就労の場の確保及び実習を通じた職域拡大を図るための受託事業
ア.緑化推進事業
a)箕面市都市公園花壇管理等事業
箕面市から委託された箕面市内の公園花壇やプランター、街路樹枡等の花壇管理を障害者職員を中心に行いました。ここ3年間の実績は以下のとおりです。
なお、緑化事業の各現場で共通して言えることですが、通りがかった市民の皆さんから「ご苦労さま、ありがとう」と声をかけていただくことで、元気に業務を行うことができました。
花壇の植栽を含む管理業務 | 街路樹枡等の除草箇所 | 市内全域合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
西部地域 | 中部地域 | 東部地域 | |||
令和元年度 | 19箇所11,580本 | 22箇所22,374本 | 11箇所8,331本 | 19箇所 | 71箇所42,285本 |
令和2年度 | 19箇所11,580本 | 22箇所22,374本 | 11箇所8,331本 | 19箇所 | 71箇所42,285本 |
令和3年度 | 19箇所11,580本 | 21箇所22,377本 | 11箇所8,331本 | 19箇所 | 70箇所42,288本 |
公園花壇管理では、体力に合わせて工程を工夫した多様な作業を行いました。夏場の酷暑下での屋外作業は、従事する障害者職員の体調や作業時の安全確保には最大限の注意を払いつつ業務を遂行しました。
b)公共施設内緑化推進事業
箕面市内の公共施設内に設置されている花壇に合計19,332本の花苗の植栽及び敷地内の除草や屋内清掃、芝の管理を障害者職員を中心に行いました。あわせて、観葉植物の入替え作業を6件、合計69回行いました。
c)その他の緑化推進事業
箕面市内の民間事業所の観葉植物の入替え作業を14件、合計150回行いました。
イ.リサイクル事業
箕面市立リサイクルセンターにおいて資源ごみ選別業務を受託し、障害者職員を中心に職員が一丸となって処理を行いました。前年度からコロナ禍での「巣ごもり」消費の影響により、搬入量の増加傾向は続いています。そのぶん作業量は増えましたが円滑に処理しています。
なお、ここ3年間の実績は次表のとおりです。
空きびん | 空きかん(アルミ) | 空きかん(鉄) | 全体での再資源化率 | |
---|---|---|---|---|
令和元年度 | 737.14t(75.2万本) | 145.45t(970万本) | 95.25t(318万本) | 90.1% |
令和2年度 | 756.07t(77.2万本) | 165.63t(1,104万本) | 97.32t(324万本) | 90.1% | 令和3年度 | 809.14t(82.5万本) | 165.26t(1,102万本) | 93.39t(311万本) | 94.8% |
【空きびん・空きかんの本数換算について】
・空きびん⇒980g(1.8L 1本分)
・アルミ缶⇒15g(350ml 1本分)
・鉄缶⇒30g(180ml 1本分)で換算しています。
ウ.ビルメンテナンス事業
箕面市立リサイクルセンターにおける清掃業務を障害者職員を中心に実施しました。
(5)障害者の一般企業等での就労と、地域での生活を支えるための相談支援事業
ア.豊能北障害者就業・生活支援センター
就業面の支援と、就業に伴う生活面の支援を実施しました。
新たに39名の登録があり、登録者は昨年度から20名増えて606名になりました。
来所や企業現場に出向く相談など2,512件の支援を行い、新規の就職25件、職場実習のあっせんは28件、年度末時点の登録者のうち、企業等で働いている人は、8名増えて328名となっています。
ここ3年間の実績は次表のとおりです。(登録者数、企業等での就労者数は各年度末)
登録者数 | 新規就職者数 | 企業等での就労者数 | |
---|---|---|---|
令和元年度 | 571名 | 21名 | 300名 |
令和2年度 | 586名 | 25名 | 320名 | 令和3年度 | 606名 | 25名 | 328名 |
なお、障害者を雇用する企業向けのセミナーを、北摂地域5箇所の障害者就業・生活支援センターと合同で開催し、合計62名の参加がありました。また、企業で在職中の障害者対象の交流会を4回実施し、合計62名の参加がありました。
イ.箕面市障害者雇用支援センター
a)就労移行支援事業(定員12名)
通年で、240日間の支援を行い、利用者の通所につなげるPR活動を積極的に実施したこともあり、利用者数は増加しています。また、6名の企業就労が実現しました。
なお、ここ3年間の実績は次表のとおりです。
年度 | 実施日数 | 延べ利用者数 | 一日平均利用者数 | 就職者数 | 定員 |
---|---|---|---|---|---|
令和元年度 | 237日 | 3,266人日 | 13.7名/日 | 5名 | 20名 |
令和2年度 | 230日 | 2,092人日 | 9.1名/日 | 4名 | ※ |
令和3年度 | 240日 | 2,360人日 | 9.8名/日 | 6名 | 12名 |
※令和2年度からのコロナ禍による利用者の減少に伴い、令和3年1月から定員を20名から12名に変更しています。
b)就労継続支援B型事業(定員10名)
令和3年1月から事業を開始し、令和3年度は、初めて通年での事業実施となりました。本事業も、就労移行支援事業と同様、関係機関への積極的なPR活動の成果として、年度末には5名と契約するなど、徐々に利用者が増えています。通年では240日、延べ881人名の利用がありました。喫茶るうぷメイプルホール店を活用した接客等の店舗業務、調理や買い物等の社会体験を、就労移行支援事業の利用に向けたステップアッププログラムとして実施しています。
c)就労定着支援事業
本年度は、13名に対して合計65件の支援を行いました。今後、法令で定められた就職後3年6か月の支援期限に達した人に対しては、「障害者就業・生活支援センター」に引き継ぐなど、切れ目のない定着支援を行っていきます。
ウ.特定相談支援事業、障害児相談支援(相談るうぷ)
サービス等利用計画(障害児支援利用計画)の作成ほか、福祉サービスの利用状況の確認(モニタリング)などの相談支援を行いました。契約者28名(うち児童4名)に対して、訪問や来所による相談を年間で227件、また、電話や見学同行、その他の支援を1,364件、合計1,591件行いました。
相談にあたっては、福祉サービスを提供している各事業者、箕面市基幹相談支援センターとの連携のもと、サービス担当者会議を開催するほか、本人中心のチームづくりを構成して向き合っています。
(6)本事業団の目的達成に必要な財源を確保するための収益事業
ア.喫茶店運営事業
「みのおライフプラザ」内で障害者職員を中心に年間208日間、喫茶店舗を営業しました。新型コロナウイルス感染症対策として、大阪府のゴールドステッカー認証を受けるなど、お客さまに安心して利用してもらえる店舗運営を心がけました。
また、商工会議所からの助言を受けた『顧客アンケート』結果をメニュー構成に反映させるとともに、原材料費の上昇を加味した提供価格の見直しなど、収益改善に向けた取り組みをすすめています。
イ.自動販売機設置管理事業
市内公共施設等に自動販売機を設置し、常設機が合計75台で716箇月、市民プール等期間限定での設置機が合計2台で4箇月、それぞれ飲料販売会社との連携のもと販売管理を行いました。前年度に引き続き、これまで設置していなかった公園等への新設に向けた調整をすすめました。
(7)法人管理部門
新型コロナウイルスの感染が拡がる中、陽性者や濃厚接触者、学校園所の休校等のために出勤できない職員に対し、箕面市の「対処方針」に準じた制度を整えました。
また、市内の他の外郭団体と意見交換の場を継続的に設けています。超低金利下での資産運用方法や光熱水費等の経費増にともなう対応策、効率的な事務手法の情報交換など、今後も有益な議論を続ける予定です。
*本事業団賛助会員の状況
本事業団の賛助会員として広く協力を依頼し、個人会員、団体会員より以下のとおり会費を受領しました。心からお礼申し上げます。会員の皆様には、今後も継続的なご協力をお願いいたします。
なお、ここ3年間の実績は次表のとおりです。
個人会員(1口500円) | 団体会員(1口3,000円) | |
---|---|---|
令和元年度 | 45件1,217口 | 19件64口 |
令和2年度 | 42件208口 | 16件61口 |
令和3年度 | 41件205口 | 16件55口 |