KSKQ(障害者事業団だより ナンバー50) 第3種郵便物認可 通巻8431号 2016年3月27日発行 KSKQ ナンバー50 障害者事業団だより 一般財団法人障害者事業団 箕面市障害者雇用支援センターの車(写真) 箕面市障害者雇用支援センターで使っている車両が新しくなりました。 日本財団の福祉車両助成事業の制度を活用して、新たに購入させていただいたものです。 3月15日、ピカピカの車両が駐車場にやってくるのを理事長はじめ職員と訓練生が出迎えると「カラフルなペイントやなぁ」「自動でドアが開く!」といった声があがっていました。 さっそく施設外就労(地域の企業の協力のもと、職員と訓練生が企業現場に出向いて実践的な作業トレーニングをするプログラム)の現場までの移動などで使わせてもらっています。 2ページ マイナンバー及びストレスチェックの事業団での取り組み 5ページ 連続講座の報告 6ページ 就労支援課の取り組み 8ページ 重度障害者市民のViewpoint35 10ページ 事業所訪問記 社会福祉法人息吹「もみじの家」 12ページ お知らせ・編集後記 マイナンバー及びストレスチェックの事業団での取り組み 改正障害者雇用促進法の合理的配慮の理念も踏まえつつ 一般財団法人箕面市障害者事業団 常務理事 兼 事務局長 野田泰弘 平成27年12月1日に改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が施行され、行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)に基づく「マイナンバー制度」(平成27年(2015年)10月5日施行)についても、平成28年(2016年)1月1日より運用が開始された。 どの企業でも対応に苦慮されていることと思われるが、当事業団のような障害者を多数雇用している事業主にとっては、障害者も混乱なく制度が運用できるように分かりやすく説明する等の配慮した取り組みが必要となってくる。 ちょうど平成28年(2016年)4月から改正障害者雇用促進法に基づく合理的配慮の提供が求められることから、まだまだ悩みながらではあるが、他の障害者を雇用する事業主にとってのヒントとなるべく、当事業団での取り組みについて、途中経過を紹介したい。 【ストレスチェック制度の概要】 常時雇用する従業員が50名以上の事業場において、1年以内ごとに1回、従業員の身体の健康状態だけではなく、心の健康状態もチェックできる仕組みを導入することが事業者の義務となった。 その背景には、職業生活で強いストレスを感じている労働者の割合が高い状況で推移していること、精神疾患による労災件数が3年連続で過去最多を更新していること等あり、社会全体の問題として対応すべく導入され、従事職員や職場のストレス状況の改善及び働きやすい職場の実現を目的とした取り組みとして実施することが最も重要なポイントとされている。 ストレスチェック制度の創設 ストレスチェックの実施等が事業者の義務となる  ■施行日 平成27年12月1日 本制度の目的 ・一次予防を主な目的とする (労働者のメンタルヘルス不調の未然防止) ・労働者自身のストレスへの気づきを促す ・ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる ○ 常時使用す労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の制度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが事業者の義務となります。   (労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務) ○ 検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。 ○ 検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務となります。   また申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されます。 ○ 面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じることが事業者の義務となります。  (厚生労働省ホームページより引用) 【当事業団での取り組み】 当事業団では、主に総務課担当者による各種研修会への参加を通じて、制度に関する理解を深めつつ、厚生労働省ホームページ等で提示されている「ストレスチェック制度導入マニュアル」や「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」に基づきながら、実施方法や規程の策定及び調査票の内容や法人独自で実施するのか外部機関への委託とするのかも含めて衛生委員会等での検討を行っている。 現状、まだ準備段階ではあるが、より個人情報に配慮した実施に向け、特に障害のある職員に対するストレスチェックの実施については気を付けたい。 【障害者職員への配慮(予定も含む)】 制度における職員への周知については、例年実施している職員全体研修において行い、障害者職員を対象に実施した研修については、ご家族・支援者にも同席していただいた上で説明を行った(後述する、マイナンバー制度にかかる周知についても同様)。 なぜなら、単独での調査票への記入が困難な障害者職員に対する記入支援を、同じ部署の職員が行うことにより、質問内容(調査票には、職場の人間関係にかかる質問も含まれている)によっては記入支援を行う職員の手前、障害者職員者が返答しにくくなることも想定し、調査票の記入に係る支援については、職員以外の人(ご家族・支援者等)で実施していただくよう依頼もあわせて行っている。 【マイナンバー制度の概要】 マイナンバー制度とは、住民票を有する全ての人に1人1つの番号(12桁)を付して、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用され、行政の効率化、国民の利便性の向上、そして公平かつ公正な社会を実現するための制度である。 期待される効果としては、大きく以下の3つがあげられている。 1.所得や他の行政サービス受給状況の管理や不正給付の防止(公平・公正な社会の実現) 2.添付書類の削減による行政手続の簡素化(国民の利便性の向上) 3.行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減され、複数業務間での連携の推進、作業の重複など無駄の削減 (行政の効率化) 民間事業者も、税や社会保険の手続きでマイナンバーを取り扱うため、従業員等からマイナンバーの提供を受ける必要があるが、社会保険(健康保険及び厚生年金関係)の手続きにかかるマイナンバーの記載については、平成29年(2017年)1月から実施予定となっている。 マイナンバーの取り扱いについては、マイナンバーに関する事務担当者(事務取扱担当者及び事務取扱責任者)を限定し、それ以外の者がマイナンバーを取り扱うことがないようにしなければならない。 また、マイナンバーの取得に際しては、本人に間違いないことを確認(雇用関係にあるなど、本人に間違いないことが明らかであると事務取扱担当者が認めるときは、身元確認書類は要しない)した上で、正しいマイナンバーを取得しなければならない。 さらに、マイナンバーが不正に使用される可能性もあることや、目的外の利用が禁止されていることから厳格な情報の管理が求められており、当然ながらマイナンバーが記載された書類についても特定個人情報として同様に厳格な管理が必要となる。 【当事業団での取り組み】 現在当事業団では、従事職員に対してマイナンバーの提供を依頼するにあたり、平成28年(2016年)分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の回収とあわせて提供いただくため準備を進め、昨年末における全職員への依頼を経て、ほぼ回収が完了している状態である。 ここに至るまでの経過や準備について、下記にお示ししたい。 1.マイナンバー制度の理解 マイナンバーは、主に総務課での事務に紐付くため、実際に事務を取り扱う総務課に属している正規職員の知識を深めるため、外部における各種研修会等への積極的な参加を行いつつ、マイナンバーを収集・管理するために必要なこと、具体的にどのような業務に適用されるか等、制度そのものへの理解に努めた。 2.マイナンバー制度の対象業務及び課題の洗い出し作業 主に、事務を実施する職員が限定されることによるマイナンバーの収集方法について検討を行う。部署により作業場所が点在しているため、部署ごとの収集が不可欠であったため、職員個々の封筒を準備し、回収を依頼する部門担当者の目に触れないよう提出の際はしっかりと密封することを前提に提出を依頼することとした。 3.マイナンバーの運用ルール、管理方法の構築 マイナンバーの目的外利用や情報漏えいを防ぐため、給与システム以外のパソコンでの運用は極力避け、紙ベースでの管理を基本とし事務作業時における他の職員の目に触れないような方法、マイナンバーや特定個人情報の保管方法等、それらを含めた組織内での運用についてまとめ、顧問社会保険労務士の確認・助言のもと、マイナンバー制度に関する基本方針及び特定個人情報に関する要綱の策定、就業規則への反映を行った。 4.マイナンバー制度の啓発と基本方針の周知等 当事業団において例年実施している職員全体研修において、マイナンバー制度について職員の理解を深めるための啓発を行うとともに、通知カード等の提供について依頼し、平成28年(2016年)分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出とあわせて、提出していただく旨告知。 平成27年(2015年)12月下旬に全職員への利用目的等を明記した通知文を配布し改めての依頼を行った上で収集を実施。 5.以後の対応 報酬や不動産賃料の支払い等についての支払調書にも、このマイナンバーを記載する必要があるため、職員のみならず顧問社会労務士・顧問会計士等、報酬を支払う相手側にも提供していただく必要があるため、スムーズな収集を目指し準備や依頼を実施している。 【障害者職員への配慮(予定も含む)】 障害者職員からのマイナンバー等の提供については、職員全体研修における周知を行ってはいるが、様々な事情により記載・提出等が困難な障害者職員に対して、各部門担当者と連携しながら、事務取扱担当者である総務課職員により、通知カードのコピーや給与所得者の扶養控除等(異動)申告書へのマイナンバー記載の支援を行いつつ、時にはマイナンバーについて、改めての趣旨説明と提供依頼を行うため、直接、障害者職員の自宅へ訪問し保護者の方との面談を実施した。 また、グループホームに入居している障害者職員については、その運営法人との調整(提出時期や提出方法等)を行うなど、特定個人情報の徹底した管理に留意しつつ、様々な方法を模索しながら回収を行ったものである。 終わりに マイナンバー制度については、平成28年(2016年)1月の運用直前における変更等もあり、正直、見切り発車的にスタートした制度である感が否めない。 また、必ずしも障害のある方に十分に配慮(通知カードの点字表記がされていない等)されたものではないため、行政の効率化という部分のみが一人歩きをし、国民の利便性の向上・公平かつ公正な社会を実現という部分が置いていかれているような印象を受けてしまう。 すべての人が、利用しやすいよう「合理的配慮」がなされた制度となればと思う。 箕面市障害者事業団設立25周年記念講座の報告 開催日時:平成27年(2015年)12月22日火曜日午後6時30分から午後8時45分 平成27年度第1回目の講座は、箕面市障害者事業団設立25周年記念講座として開講し、102名の方に参加していただいた。 講座の開講にあたり、来賓の方より下記の通りご祝辞をいただいた。 ●箕面市長 倉田哲郎様より 「長年にわたって箕面市の障害者の支援、特に就労支援関係で中核となっていただいている障害者事業団の皆様方に心から感謝を申し上げたいと思います。 箕面市としても、社会的雇用制度の国制度化に向けた努力や、障害者優先調達推進法を活用した取り組みなどを行っています。 本日の講座がきっかけとなって、今後の障害者福祉の充実した取り組みに繋がっていくことを心から祈念を申し上げます。」 ●箕面市議会議長 二石博昭様より 「障害者事業団には『忘己利他』の精神でご尽力を頂きたいと思います。 また、本講座が箕面市の障害者施策の更なる発展と、障害者市民の幸せに繋がるよう御期待を申し上げます。」 講座では、『障害があっても、地域で学び、働き、安心して暮らして行きたい』その実現を応援するためのヒントを探る 「社会支援に基づいた障害者の多様な就労について」とのテーマで、埼玉県立大学保健医療福祉学部教授の朝日雅也氏よりお話をいただいた。 朝日氏のお話は、ユーモアが織り交ぜられた非常にわかりやすいものであったが、紙面の都合上、要旨のみをまとめてお伝えする。 ■講座内容の要旨 まず、「ノーワーク・ノーペイ」、つまり、「仕事をしないのに給料を払う必要はない。それは失礼なことだ。」という考え方がある。 ただし、ここでの「はたらく」とは生計を立てるためのものだけではなく、ミッション(mission イコール 使命)といったものまで幅の広いものである。 例えば、生活介護事業所で行われるような散歩であっても、地域の見守りのプログラムとすることが出来るかもしれない。 その行為の価値を、社会に説明できるかどうかが問われている。 「一般就労」(雇用契約を結ぶ就労)では、たとえ会社に利益がない場合でも、借金をしてでも給料を支払う必要がある。 一方で「福祉的就労」(就労継続支援事業B型など)では、利益がでなければ、工賃の額は低くてもよい、となっている。 どちらの仕組みに入るかによって、収入に大きな差が出るような実態がある。 しかし、「その人が持っている力を出し切ったときには、その仕事にお金を払う」ということは大事なことだと考える。  障害者権利条約第27条では、障害者は保護の対象ではなく、「他のものとの平等を基礎として労働についての権利を有する」とされている。 また、同条約での労働は「あらゆる形態の雇用」を対象としている。 それに対して、日本における障害者の働き方は、「日中活動」「一般就労」「福祉的就労」などの制度にあわせて働くことになっており、そこで得られるものに差がある。 障害者が働くための支援については、環境整備や人的整備は進められてきた。 これからの障害者の労働への支援の方向性として、箕面の社会的雇用をはじめ、全国の多様な取り組みを参考として、「社会支援雇用」という考え方を提起している。 社会支援雇用とは、「就労を希望しながら、一般の労働市場では就労するのが困難な障害者に対し、賃金補填、福祉的支援等の社会的支援の提供を前提として、労働者としての就労を保障する支援の仕組み(制度)と実践」と定義している。 社会支援雇用の考え方は、ILO(国際労働機関)第99号勧告に定められているような「保護雇用」にあたるものであり、労働と福祉の中間的なものである。 日本においては、新しい考え方なので抵抗もあるが、福祉から就労へのステップになることなど、訴え続けていかなければならない。 就労支援課の近況あれこれ 箕面市障害者雇用支援センター パンフレット リニューアルに向けて検討中 企業就労支援の仕組みを広く知ってもらったり、当センターを利用して支援を検討する際の参考資料にもなる施設パンフレット。 何十年ぶりでのリニューアルをすべく、原稿作成にとりかかり始めました。 改めて、当センターの手元にある他の就労移行支援事業所のパンフレットを手に取ってみました。 お洒落なレイアウトだったり、就職に向けた具体的な支援内容が書かれていたり、手に取ってみようと思える工夫がいっぱいです。 このようなところからも、各地で様々な特色を活かした就労支援の取り組みが拡がっていることを実感します。 予算にも限りがあるので、全国展開している大規模法人のような豪華なパンフレットを作成することはできませんが、「施設内だけでなく施設外支援の訓練メニューが充実していること」「就職先とのジョブマッチングを大切にして就職後の職場定着に向けたサポートも大切にしていること」なども盛り込んだパンフレットを、担当職員が頭を悩ませながら検討中です。 完成まで、しばらくお待ちください。 相談るうぷ 相談支援の取り組みが本格的に稼動しています 障害者事業団が実施する相談支援事業所「相談るうぷ」が11月1日に法令に基づく指定を受けて開所しています。 主には、障害福祉サービスの利用を希望する人に対して「サービス等利用計画」を作成する支援を、新たに配置する相談支援専門員が行うものです。 高齢者福祉の分野で活躍されているケアマネージャーのような専門職に似た取り組みと思っていただければよいかと思います。 これまで当事業団が接点をもつことが少なかった関係機関とも幅広く連携することを心がけながら、障害者の地域生活(様々な場所での働き、暮らし)が、より豊かで安心できるものとなるための支援をすすめると共に、相談支援をすることで気付くことができた地域課題について、解決に向けて事業団から主体的に提案をしていきたいと思っています。 『喫茶るうぷ』『アートショップ グリーンるうぷ』の両店舗と共に、新たに加わった『相談るうぷ』も、どうぞよろしくお願いいたします。 ●相談るうぷ (稲1-11-2 本部事務所(4階)内、電話 724・3382) 豊能北障害者就業・生活支援センター 在職者交流活動の一環で、マイナンバー学習会を実施しました 3月13日日曜日に、豊能北障害者就業・生活支援センターで実施している在職者交流活動の一環で、マイナンバーに関する学習会を行いました。 企業で働いてる場合には、年末調整の手続きでマイナンバーが必要にもなってきます。 また、テレビ等でもマイナンバーにかこつけた詐欺などの消費者被害の事例も報道されています。 自分自身のプライバシーを守るうえで、マイナンバーを正しく管理するために、何が必要なのかを考えるとともに、マイナンバーの管理について必要以上に怖がらないためにも、正しい情報を一緒に確認する機会としました。 事前の参加確認の際に「会社の研修で知っているから参加しません!」という人も何人かいたのも印象的でした。 マイナンバーについて分かりやすく従業員に説明している会社の取り組みを知ることにもなって、心強くも感じました。それでも当センターの取り組みへの関心が高い人が多く、日曜日の午前中にもかかわらず20名の参加がありました。 当日は、マイナンバー制度をまとめたルビ付きの資料をもとに、改めて制度の全体像を確認したあと、職員と登録者がグループに分かれて制度についての気になることやわからないことについても理解を深めました。 学習会の後で、「制度のことを知らないために漠然と不安に思っていたが、理解できるきっかけになって、よかった」という感想があった一方で、「まだまだ、わからないことがある」という声もありました。 今後も必要に応じて個別での情報提供などのサポートの必要性を感じました。 箕面市障害者雇用支援センター さよなら ハイエース。今までありがとう! 今回の機関誌の表紙で、障害者雇用支援センターに新しい車両が納車されたニュースをお知らせいたしましたが、一方で、これまで13年以上も活躍してきた「ハイエース」とはお別れすることになりました。 平成14年11月。 今の事務所への移転に際して当時の「障害者雇用支援センター日本障害者雇用促進協会」の助成を受けて購入させていただいた自動車です。 これまでの走行距離は15万キロ、障害者雇用支援センターを利用していた多くの訓練生(企業での就職に向けてトレーニングをしていた人たち)と職員の移動手段として活躍しました。 長い間、ご苦労さまでした。 今まで活躍してきたハイエース(写真) Viewpoint ナンバー35 読者の皆さん、こんにちは。 さて、突然ですが、みなさんは言語聴覚士をご存知でしょうか。 今回はちょっと視点を変えて、言語聴覚士について書いてみたいと思います。 実は、私のところに来て頂いているヘルパーさんの中に、言語聴覚士を目指している方がおられます。 その方に、言語聴覚士の仕事のことなどいろいろお伺いしました。 ●知らなかった言語聴覚士(ST) 私は言語聴覚士(ST)について、誤嚥性肺炎になるまでは詳しいこと知りませんでした。 私の考えでは、脳性まひや脳の血管障害などで重度の言語障害がある方、上手く話せない方をリハビリするのが言語聴覚士(ST)と思っていました。 でも、約2年前に、突然の胸の痛みや高熱が何日も続いて、「誤嚥性肺炎」との診断を受けたことがあります。 医師から「誤嚥が原因、将来的に胃ろうを造ることも考えるべき。」と言われました。 そして、噛み砕き、食べるときの姿勢、食べ物に「とろみ」を付ける食べ方などの誤嚥性肺炎の予防についてお話を聞き、そこに言語聴覚士(ST)が関わっていることを知りました。 ●Aさんの紹介 現在、専門学校で言語聴覚士(ST)を目指しておられるAさんですが、出会いは箕面市の障害者団体の夏季キャンプです。 私の介助ボランティアとして参加されて友人になり、その後、重度訪問介護のヘルパー資格を取得されて、私の生活面を支えてくれている貴重なヘルパーの一人になっていただいています。 ●言語聴覚士(ST)を目指した理由 Aさんが介護老人保健施設に勤めていた頃の話だそうですが、とてもうどんが好きな利用者さんがいました。 しかし上司からは、肺炎予防のためか、この方は麺類を食べてはいけない人だといわれていたそうです。 ある日の昼食がハンバーグ定食かうどん定食のどちらかを選べたのですが、その方は仕方なくハンバーグ定食を選びました。 そのときのその方がすごく辛い顔をされ、今でもそのときの顔が忘れられないそうです。 Aさん自身が食べることが好きなので、そのとき食べたいものが食べられるようにしてあげたいと強く思ったそうです。 もともとリハビリに興味があったAさんは、親しくしていた理学療法士(PT)の先生に、この話をしたそうです。 そうすると理学療法士(PT)の先生は、言語聴覚士(ST)の存在を教えてくれたそうです。 早速Aさんは言語聴覚士(ST)について調べ学校を探し言語聴覚士(ST)になるべく勉強を始めたということでした。 勉強を始めて気付いたそうですが、脳や聴覚の機能についても勉強するということで、思ったより言語聴覚士(ST)の専門領域が広いことに驚いたそうです。 ●言語聴覚士(ST)の専門領域 言語聴覚士(ST)の仕事は簡単にいえば、目の部分を除いた首から上のリハビリの担当で、ちなみに目は「視能訓練士」だそうです。 大きく分けると脳、耳、口腔内の3ヶ所になります。 例えば、脳では高次脳機能障害のリハビリ、口腔内は上手く話せない構音障害や嚥下障害のリハビリになるそうです。   「言葉が話せない」という障害では、原因が大きく2つあります。 ひとつは、インプットの問題、つまり耳からの情報が処理できないことで、「こんにちは」とは聞こえるのに「こんにちは」という言葉が認識できないという高次脳機能障害の中の一つの障害の失語症。 もう1つは、アウトプットの問題で、「こんにちは」は理解できて「こんにちは」と返事したいのに、口の開け方や発音の仕方が分からない、うまくできない構音障害があるそうです。 この場合は、二次障害として、うまく話せないから喋りたくなくなるということも出てくるそうです。 また、音声障害という声帯の障害(声帯ポリープなど)もあるそうで、多くの場合は声の使い過ぎが原因で、リハビリというより、衛生指導や高音を使わないとか、安静にするなどの指導をしているということです。 その他、人の顔の認識ができなくなる、「相貌失認(そうぼうしつにん)」というものもあるそうです。 耳に関しては、特にリハビリというものはなく、補聴器の設定とか人工内耳設定などがあるとのことでした。 嚥下障害に関しては、飲み込みをよくする、食事を上手く食べられるようにするというリハビリを行います。 嚥下とは、舌を使って食道に食べ物を送って行くことで、舌が重要な役目をはたすそうです。 舌の訓練、舌のリラクゼーションはもちろん、食形態の提案で例えば「とろみ」を付けて飲み込み易くする手立てもあります。 通常食道は閉まっていて、呼吸のために気道が開いているそうです。 飲み込むときには喉頭(喉仏)が上がり食道が開くようになっているので、嚥下障害のリハビリでは、手を使って喉頭を上げる喉頭拳上運動という訓練があるそうです。 また、口腔内は、雑菌のたまり場で、感染、誤嚥性肺炎の危険があり、口腔内ケアは重要な指導で、実習では口腔内ケアに多く関わったとのことです。 ちなみに、高齢者の死亡原因で、誤嚥性肺炎が第3位になっているとのことでした。 吃音障害では、リハビリの一つに、リズムに乗せて喋りやすい方法を見つける、「リズム吸引法」というのがあるそうです。 そして、家族に吃音障害の正しい知識をもってもらうことも重要な仕事のひとつだといわれていました。 今回の取材に、快くお答えをいただいた、Aさん、本当にありがとうございました。 Aさんが言語聴覚士(ST)の試験に合格されて、私のような言語障害や誤嚥を予防するリハビリや、吃音等のリハビリで、多くの人が幸せになれるサポートをされることを希望します。 それでは、次回もお楽しみに。            担当、田浩志 箕面のまちの事業所訪問記 社会福祉法人 息吹(いぶき)  就労継続支援B型事業所 「もみじの家」 もみじの家 外観(写真) 「もみじの家」は、平成元年(1989年)11月に「箕面市精神障害者家族会みのお会」が運営主体となり、共同作業所として設立されました。 その後、平成16年(2004年)4月からは、社会福祉法人息吹が引き継ぐと同時に精神障害者小規模通所授産施設となり、平成23年(2011年)10月からは、障害者自立支援法(現:障害者総合支援法)に基づく、就労継続支援B型事業所として運営されています。 明治の森箕面国定公園へと向かうドライブウェイの入口に程近い場所に建つ「もみじの家」を、1月も終わりに近いある日の午前中に訪問して作業を見学させていただいた後、管理者の田中さんからお話をうかがいました。 -取材時は、BGMが流れる中、箕面のお土産で人気の「もみじの天ぷら」の材料になる塩漬けもみじの葉の茎切りと、箕面市指定ゴミ袋の袋詰めをテンポ良く作業されているのを見学させていただきました。 利用者の皆さんが役割分担を意識されていることと、集中力の高さが印象的でした。 BGMは利用者の方の好みに合わせてラジオやCDを流しています。 作業は、長年受注していた作業が、体力的に利用者さんの負担となってきたため、新たな作業に切り替えました。 他には「おみくじ」加工の作業もあります。 -工賃(作業の対価として施設利用者が受け取るお金のこと)について教えてください。 工賃は、以前の作業より少し下がりましたが、利用者さんと話し合って決めました。 毎月、収入と経費、工賃額の一覧表を作成して利用者さんにお見せすることで、透明性を大事にして、理解を得ています。 今後は、工賃向上に向けて、袋詰め作業の請負量や、他の作業を増やしていきたいと考えています。 -1日のスケジュールで何か工夫されていることはありますか? 精神障害で気分がしんどくなる利用者さんがおられるので、作業の前後に30分間程度のフリータイムがあり、昼休憩は1時間、午前と午後にそれぞれ2回ずつ5分間程度の小休憩を入れています。 -施設の定員はどのようになっているのですか。 現在、利用定員は20名で職員は5名です。 今日は15名が利用されています。 -主な活動内容を教えてください。 箕面市指定ごみ袋製袋作業などを通した就労訓練、生活相談、食事の提供(昼食)などです。 -企業へ就職を希望する利用者さんはいますか? 「もみじの家」は就労することを目標に頑張っている利用者さんが多いです。 現在も2名の方が就職に向けて取組まれています。 -就職への支援はどのように進めたのですか? 就労を希望されている利用者さんとハローワークへ求職者登録に行ったり、ステップアップをめざして就労継続支援A型事業所さんの見学に同行したりしています。 ただ、就労支援を「もみじの家」単独で行うことは難しいので、関係機関の協力を得て進めています。 より利用者さんに寄り添った就労支援を実現するために、大阪障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター、ハローワークの専門援助部門と連携しながら就労支援を行っています。 -その他にされている活動があれば教えて下さい。 利用者さんに向けて、研修会や勉強会を開催して、成年後見制度や虐待防止法、障害者差別禁止法などの法律を勉強したり、つい最近では「マイナンバー制度」について学んだりしました。 -地域とのむすびつきを作ることを重視されていますが、どんな取り組みがありますか? もみじの家地域交流祭「いっぷく」を毎年企画し、地域住民の方や近隣の小学校へチラシを配り、参加のお誘いをしています。 回を重ねるごとにご来場いただく人数も増えてきています。 イベントを知った方からボランティアのお申し出もあり、少しずつ、「もみじの家」を知ってもらえています。 「継続は力なり」のことば通り今後も続けていきたいと思っています。 また、法人としての取り組みでは、精神障害者理解促進事業「ハートパーク」を毎年開催しています。 企画や運営には、箕面市社会福祉協議会さんや箕面市教育委員会さんに協力いただいており、小学生向けには、校内でのワークショップや「もみじの家」での作業体験等の交流、地域住民の方々に向けては、講師をお招きしての学習会を開催しています。 精神障害者と市民が直接触れ合ってお互いに理解を深める場を作ることで、精神障害者が差別されることなく、この地域に於いて共に生きる市民であることを認識してもらい、誰もが住みやすい地域であるために一人ひとりが何を意識して何が出来るかを考えてもらう機会にすることを目標としています。 また、地域のお祭にも参加します。 -スタッフの人材育成等について教えてください。 職員一人ひとりのスキルアップのために大阪府内で行われている研修に参加し、研修で得た知識はスタッフミーティング時に共有しています。 また、利用者さんに対してどのような支援をすべきか悩んでしまうことがあります。 その際も、時間を置かずに職員間で話し合い、お互いに助け合いながら利用者さんに向き合っています。 -箕面市障害者事業団への期待は何ですか。 事業所で取り組む作業を充実させるために、行政と事業所との連絡調整及び職種拡大を期待しています。 -最後にお知らせ等あれば教えて下さい。 現在、支援職員の人材確保が急務となっています。 利用者さんへのきめ細かな支援を行うために、職員体制を充実させたいのですが、求人への応募がまだ少なく、引き続き応募受付中です。 この記事を読まれて、「もみじの家」での支援の仕事に興味を持たれた方は、是非一度お問い合わせください。 住所と連絡先は、箕面市箕面3-9-19電話・ファックス072・721・9006です。 お待ちしています。 「もみじの家」で話し合う皆さん(写真) 「もみじの家」 田中さん(写真) 【お知らせ】 瀬戸山みぎわさん(写真) 当事業団職員の瀬戸山みぎわさんが、昨年11月にボランティア功労者として厚生労働大臣から表彰されました。 ボランティアの内容は、機関誌ナンバー42の「働く顔」でも取り上げましたが、高齢者デイサービスセンターでの話し相手としての傾聴ボランティアです。 長年にわたり仕事が休みの土曜日に活動を続けてきたことが評価され、事業団にとっても、すごく嬉しいニュースになりました。 写真は、表彰式に出席した後に事務所に報告に立ち寄ってくれたときに撮影したものです。 【編集後記】 今年4月から、「障害者差別解消法」と「改正雇用促進法」(一部公布日又は平成30年4月)がいよいよ施行されます。 当事業団のホームページには、「支援事例」として、これまでにおこなってきた「合理的配慮」を掲載しています。 毎年3月には新しく事例を追加しますので、是非ご覧になってみてください。 また、今回発行の機関誌から、新コーナーである「箕面のまち 事業所訪問記」の掲載を開始しました。 市内にある障害者事業所を訪問して、取材やインタビューをさせていただいた内容を、機関誌の記事にして読者の方々にお届けします。 箕面市内での様々な取り組みの様子を、しっかりとお伝えできる内容の記事にしていきたいと思っています。 今回、「もみじの家」を訪問させていただいて、利用者の皆さんや職員さんが、チームワーク良く作業をされていたのがとても印象に残りました。 取材にご協力いただいた「もみじの家」の皆さん、どうもありがとうございました。 KSKQ 障害者事業団だより ナンバー50 発行日/2016年3月27日 編集人/一般財団法人箕面市障害者事業団(理事長 岡 猛博) 郵便番号562-0015 大阪府箕面市稲1-11-2 ふれあい就労支援センター4階 TEL 072・723・1210 FAX 072・724・3383 ホームページhttp://www.minoh-loop.net/ Eメールinfo@minoh-loop.net