KSKQ(障害者事業団だより ナンバー49) 第3種郵便物認可 通巻8342号 2015年12月8日発行 KSKQ ナンバー49 障害者事業団だより 一般財団法人障害者事業団 箕面市立中央図書館 内部(写真) 箕面市立中央図書館は、平成27年(2015年)4月にリニューアルオープンしました。 リニューアルの際に、写真にあるコーヒーの自動販売機を事業団が設置させていただきました。 このコーヒーは、図書館内でも飲むことができ、毎日、30人程度の方にご利用いただいています。 自動販売機はメンテナンスが必要ですが、メイプルホール2階の「喫茶るうぷ」の実習生が職業訓練の一環としても取り組んでいます。 (ゆっくりと時間のある方は、2階の「喫茶るうぷ」もどうぞご利用ください。) 2ページ 新常務理事 兼 事務局長就任のご挨拶 4ページ 就労支援課の取り組み 6ページ 重度障害者市民のViewpoint34 8ページ 連続講座の報告 10ページ 事業団日誌 11ページ 西へ東へ 12ページ お知らせ・編集後記 新常務理事 兼 事務局長就任のご挨拶 一般財団法人箕面市障害者事業団 常務理事 兼 事務局長 野田泰弘 平成27年(2015年)6月30日付けにて退職されました、栗原久前常務理事 兼 事務局長からバトンを受けまして、平成27年(2015年)7月1日より、一般財団法人箕面市障害者事業団の常務理事 兼 事務局長を拝命いたしました野田泰弘と申します、よろしくお願いいたします。 プロフィール(自己紹介) ・昭和44年(1969年)1月生まれの46歳 ・大学を卒業後、某生活協同組合に配送担当として就職し6年間勤めた後、平成8年(1996年)7月に退職。 平成9年(1997年)4月に財団法人箕面市障害者事業団(当時)に入職。 事業団入職後については、下記のとおりです。 ・平成 9年(1997年)4月 事業課公益事業係(リサイクル部門) ・平成13年(2001年)4月 事業課公益事業係(緑化推進部門) ・平成14年(2002年)4月 事業課収益事業係(喫茶・物品販売部門) ・平成18年(2006年)4月 総務課庶務係 ・平成19年(2007年)4月 総務課庶務係長を拝命 ・平成23年(2011年)4月 総務課長を拝命 ・平成26年(2014年)8月 事務局次長を拝命 ・平成26年(2014年)8月から10月 箕面市健康福祉部(障害福祉課)への派遣研修 ・平成27年(2015年)7月 常務理事、事務局長を拝命 事業団入職当初は、事業課公益事業係において、障害のある職員と共に働く現場での従事が主であり、箕面市からの受託事業をしっかりとこなしていくこととあわせて、障害者市民の実習受け入れ、障害のある職員に対する職場での支援のあり方や関係性の構築に悩みながら日々の業務に取り組みました。 事業課収益事業係では、初めて取り組む店舗の運営(喫茶るうぷ2店舗(※メイプルホール店、ライフプラザ店)、※フラワーショップぐりーんるうぷ、自動販売機の設置管理等)に四苦八苦しながら、障害のある職員との関わりはもちろん、店舗における障害者市民の実習受け入れやイベント出店による啓発活動に加え、収益の確保に向け奔走する毎日でした。 (※ 喫茶るうぷメイプルホール店:現 就労支援事業の店舗) (※フラワーショップグリーンるうぷ:現 アートショップグリーンるうぷ) 総務課では、裏方として現場職員を支える立場となり、庶務的業務とあわせて会計業務に従事し、日々の会計事務や給与計算、職員の社会保険関係や年末調整、監査や決算にかかる事務に加え理事会・評議員会の準備等、法人のソフト面における業務に取り組んできました(公益法人制度改革や新・新公益法人会計基準の導入についても従事)。 また、平成26年(2014年)8月から10月の3ヶ月間は、箕面市健康福祉部障害福祉課へ派遣研修に行かせていただき、箕面市における障害福祉に関する行政手続きや業務等について学ばせていただきました。 入職した当時は、まさか自分が常務理事・事務局長に着任するとは夢にも思っていませんでしたし、入職後は、ただがむしゃらに障害のある職員との関わりを大切にしながら業務に取り組み、時には「本当にこれで良いのか」と迷いながらも走り続けてきました。 そのような私が、設立から25年を経たこの節目の年に、当事業団における日常業務を統括する役職を拝命したことを大変光栄に感じるとともに、その責任の重さに身の引き締まる思いの中、日々業務に臨む毎日です。 障害者を取り巻く社会情勢が、めまぐるしく変化していく昨今、障害者の職業的・社会的自立の促進を目指す当事業団の理念に則って、箕面市行政をはじめ、各関係機関、各障害者団体とも密に連携を取り合いながら、諸先輩方々や前常務理事 兼 事務局長が培われた信頼関係や「志」を大切に全力で臨んでいく所存です。   今後とも、お力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 お知らせ 11月1日から、下記3つの目的を掲げて障害者総合支援法に基づく指定特定相談支援事業(名称「相談るうぷ」)を障害者事業団本部事務所(ふれあい就労支援センター4階)に併設し、障害福祉サービスの利用を希望する方が適切な支援が受けられるための計画書(サービス等利用計画)を作成する支援等を行っています。 1.地域の障害者市民に対する計画作成ニーズに、当事業団の立場からも主体的に対応するため。 2.これまでの当事業団で取り組むことが少なかった生活面の支援にも関わることで、高齢化がすすむ当事業団の障害者職員の生活面課題にもより専門的な視点から向き合うことにつなげるため。 3.箕面市自立支援協議会相談支援部会にも参画し、障害者市民の地域課題の解決に向けて障害者事業団も市内相談支援事業所との連携をはかりながら積極的に取り組むため。 これまで当事業団で取り組んで来た就労支援の実践を相談支援でも活かすと共に、当事者の意向に寄り添いながら、障害者の社会的・職業的自立について、より一層寄与できるよう事業を進めて行きたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。 就労支援課から 『説明会』にも力を入れています!! 就労支援を多くの人に知ってもらうための取り組み 障害者事業団では、「しゅうぽつ」「なかぽつ」と呼ばれている「豊能北障害者就業・生活支援センター」という相談機関と、障害者総合支援法で定められた就労移行支援という2年以内の施設通所を通して就職に向けたトレーニングを実施する「箕面市障害者雇用支援センター」という二つの取り組みを中心に、広く障害のある方の企業での就職の支援を行っています。 私たちのPR不足もあって、支援を受けようとされる方の中には「知ってもらえてそうだけど、実は知られていないこと」が課題となっています。 *知ってもらえてそうで、実は知られていない就労支援のこと    「どんな人が支援を受けているの?」 「就職先は、どのようなところがあるのか?」 「就職に向けたトレーニングの内容は?」 「仕事の紹介はしてくれないらしいけど、どのような支援をしてくれるの?」 「会社で就職した場合は、いつまでも支援は続くの?」 「仕事が順調だったら、支援の登録は取り消してもええんとちゃう?」 「支援を受けるのは費用がかかるの?ほとんどの支援が無料で受けられるのはなぜ?」 そこで、今年度から対象者ごとに内容を変えつつ、説明会を積極的に企画することにしました。 本誌面では、4月以降に実施した説明会のうち一部の取り組みを紹介させていただきます。 1.豊能北障害者就業・生活支援センターが実施した説明会 (1)学生の皆さん、学校の先生方を対象とした説明会   学生の皆さんが集まりやすい夏休み期間を利用し、就労支援の説明会を実施いたしました。 地域の支援学校、高等支援学校、地域の高校や短期大学・大学に通われる方や学校で進路指導に携わる先生方が参加されました。 企業で働いている障害者の働きぶりの様子や、就職までの支援、就職後の職場定着面での支援や職業生活を支えるための生活面の支援は、どのようなことを行なっているのかをイメージしていただける話をさせてもらいました。 説明会の参加を通して、これまでの漠然とした不安が軽くなったというお声もいただきました。 ただ、参加される人数が多くなったことで、全ての方に知りたい情報をお伝えしきれなかった部分もあったようです。 個別相談での説明につなげたり、2回目以降に実施する説明会の企画内容に反映させていただくなど更なる工夫の必要性も感じています。 (2)関係機関に対する説明会   就労支援でよくいわれる連携。 その連携をすすめていくためには自らの取り組みのことを地域の関係機関の皆さんに深く知っていただくことが大切です。 豊能北障害者就業・生活支援センターが参画している池田市地域自立支援協議会の就労・日中活動支援部会で時間を割いていただき、参加されている池田市内の障害福祉関係機関の皆さまに最近の就労支援の状況を説明する機会にしました。 豊能北圏域で目指す「多くの人が就労に希望を持ち、積極的にチャレンジし続けられる地域の仕組みづくり」を一緒に目指していくことを改めて確認させていただき真の連携を深めるための機会にしました。 2. 箕面市障害者雇用支援センターが実施した説明会 (1)主に学齢期のご家族の方を対象とした説明会 学齢期の障害児の親御さんを対象に、将来の進路や就職のことに関する情報提供を目的とした説明会も実施しています。 対象となる方の年齢や学校での状況に応じて、説明内容を変えながらお伝えさせていただいています。 学校卒業時に就職や就労移行支援の通所利用につながらなくても、生活訓練や就労継続B型支援などの福祉施設の支援を受けて、時間をかけて一つずつスキルを身につけて就職を目指すなど多様な選択肢、可能性があることも説明しています。 また、当事者ご本人とご家族の承諾を得た上で、支援学校を卒業した後に箕面市障害者雇用支援センターの通所での支援を受けて就職された事例をお伝えさせていただくこともあります。 具体的な事例を説明することで、より理解を深めていただけるようなので、これから実施予定の説明会でも活かしていく予定です。 (2)施設通所を検討されている方を対象とした説明会 通所施設である箕面市障害者雇用支援センターの通所を検討されている方向けの説明会は、今年度すでに2回実施しています。 企業での就労に必要な作業スキルや対人マナーを身につけるために、センターで取り組んでいる支援内容を知っていただく機会にしています。 特に、施設内の作業トレーニングだけでなく、企業現場等を活用させていただく施設外就労と呼ばれる作業や、対人マナーを身につけるための面談にも丁寧に向き合っていることを、お伝えさせていただいています。 国の制度見直しにより、平成21年(2009年)4月から障害者雇用支援センターの定員がこれまでの15名から20名に増えたこともあり、これまで110名の方が通所利用されました。 また、平成20年(2008年)12月に指定を受けた豊能北障害者就業・生活支援センターも登録者は、約380名になっています。 それでもまだまだ、就労支援のニーズがありながらも支援につながっていない方がおられることも考えられます。 障害者就業・生活支援センター、障害者雇用支援センターそれぞれが、地域の障害者就労支援の期待に応えられる存在となるためにも、これからも説明会を引き続き実施していきたいと思います。 Viewpoint ナンバー34 読者の皆さん、こんにちは。 今回も医療従事者と障害者市民のことについて書きたいと思います。 そこで、前回の記事で登場して頂いた障害当事者のAさんの貴重な体験談を再びご紹介して、そこから見えてきたことを書いてみたいと思います。 □前回の振り返り あらためてAさんのご紹介をさせていただきます。 私とAさんは、障害者市民へのヘルパー派遣事業などを行っている箕面市内の団体の理事をしています。 そのことがきっかけでお友達になった方です。 前回は、Aさんがある病院で「患者はあなただけじゃない!他の病院を探して。」とまさに「診療拒否」ともいえる言動をされて、とても悔しい思いをされたことを、ご紹介しました。 バリアフリーやノーマライゼーションの言葉が、ずいぶん一般社会に浸透して来ていると思われる中であっても、まだ、差別的な言動をとられたことにすごく驚きました。 □病院での出産 今回はAさんに、医療機関での良い思い出のエピソードとして、Aさんが出産されたときのお話をお伺いしました。 Aさんの障害は、17歳の時に交通事故で右足の骨盤からの切断と、右手の肘下からの切断です。 23歳の夏に妊娠が分かり、産婦人科を受診したところ、妊娠5週目とのことでした。 そこでAさんは、切断に詳しい病院を2ヶ所ほどまわり出産について相談したところ、「骨盤を切断しても、その本人が生きて行けるという医療技術が出来たばかりで、骨盤のない女性の出産例は未だかつて無い」と言うことでした。 もちろん主治医も、骨盤のない女性の出産については全く知識がなく、初めての経験でした。 通常、赤ちゃんは、母親の2つある骨盤で支えられ、40週間母体で過ごします。 しかしAさんには、その支える骨盤が1つありません。主治医はAさんに、「(無事)産まれてくるかもしれないし、産むことが出来ないかも知れない。」さらに、「お腹の中で赤ちゃんが大きくなることに身体が耐えられず、出産まで寝たきりになるかもしれない。」と言い、いろんなリスクの可能性をAさんと一緒に考えてくれました。 何よりAさんが嬉しかったのは、「あなたが産みたいと望むなら、僕たちはチームを組んで全力でサポートするから。」という主治医の一言でした。 初めて出産するAさんは、不安になるとすぐ病院に連絡して診てもらいました。 その内の一度は、お腹が痛くなり出血したので慌てて病院に行くと、原因は痔だったという笑い話もあったそうです。 それから30週を過ぎた時、Aさんはお腹の膨らみで今迄以上に幻肢痛(怪我や病気によって四肢を切断した患者の多くが体験する痛み。あるはずもない手や足が痛む難治性の症状。電流を流した万力で潰されるような痛みがあるという。痛みを感じているはずの部位は実際には失わている為、痛み止めの薬や麻酔などは当然のごとく効果がないといわれている。)が強くなり、主治医に相談しました。 しかし、今はまだ赤ちゃんは自力で肺呼吸出来ない状態なので、赤ちゃんが肺呼吸を出来るように、母体に2週間かけて筋肉注射し、35週で帝王切開で赤ちゃんを取り出す事を決めたそうです。 そして、病棟看護師さんたちにAさんの状態を知ってもらう為に、少し早く入院したそうです。 本来は、腰椎麻酔や局所麻酔を使用して帝王切開を行うのですが、Aさんの場合は背骨が湾曲していて、麻酔の刺し所が解らないとのことで全身麻酔になりました。 □愛娘の誕生 1997年3月11日、午前10時57分無事に、愛娘の愛子ちゃんが誕生しました。 Aさん曰く、タレントのガッツ石松によく似たガッツ愛子ちゃんだったそうです。 しかし、愛子ちゃんには全身麻酔が少しまわっていて仮死状態での出産で、保育器に入る事になりました。 お腹を切って動けないAさんが愛子ちゃんに会えたのは3日後で、腕の中の小さな命に号泣しつつ、ガッツ石松似に大笑いしたらしいです。 後日、手術担当の看護師さんが、愛子ちゃんの産声を吹き込んだカセットテープを渡してくれました。全身麻酔で産声を聞くことが出来なかったAさんに、聴いてもらうために録音されたものでした。 その産声は、元気に産まれつつも麻酔がまわったためか「ふにゃー」という声だったので、Aさんは泣き笑いしたそうです。 □みなさんへの感謝 産声を聴かせて頂いた看護師さん、出産時に、赤ちゃんに何かあった時にと手術に同席してくれた小児科医の先生、そして何より、言葉だけではなくAさんの出産のためのチームを作り上げた主治医の先生に、Aさんはとても感謝しているということです。 そして、「命が産まれる瞬間を、またその命が生きていくことを支えてくれた全ての人に感謝をしています」と言われました。 最後にAさんから、「医療機関で治療を受ける中では嬉しい事実も有りますが、残念で悔しい事例も多々有ります。 『医者も人間』、間違えた時には素直に患者に伝え、心を開いて向かい合ってくれる医師には、本当に感謝の念を伝えたいです。 私たち障害のある人達は、医療機関にお世話になることが少なくありません。 問題があったときには泣き寝入りすることなく、医療を受ける側として小さい声でも一緒にあげて行こうと思います。 医療発展の為にも。」との言葉をいただきました。 Aさんお忙しい中、二回続けて取材にご協力をしてくださり、本当にありがとうございました。 □障害当事者と医療の関係 さて今回も、Aさんの大変貴重な体験談をご紹介しました。 私自身も「脳性まひの障害者」となって何十年も経たちます。 私もAさんと同様に、医師や医療機関で、良くも悪くもいろいろな経験をしています。 私の場合は、強い言語障害がある上に、よだれを垂らしていることが多いので、初対面の場合には強い知的障害があると思われ、治療が終わるまでずっと幼児言葉を使い続けてしまう医師がおられます。 また反対に、患者を見た目で判断せずに同じ人として扱い、ふれあいを大切にされる医師もおられますが、そのような医師と出会える機会は非常に少ないと感じています。 それを解決するには、医療関係の仕事は人対人ですから医学の勉強だけではなく、偏見を持たず人との関係作りを大切にする医師を育てるカリキュラムを、大学の医学部や医療系の専門学校、そして障害者団体と一緒に作れたら、障害当事者だけでなく、全ての人を理解出来る医師になれるのではないか?と思っています。 さて今回の記事は、いかがでしたか?  読者の皆さんに、このシリーズのご意見やご感想をお聞かせいただけたら幸いです。 それでは、次回もお楽しみに。 担当、田浩志 平成26年度(2014年度)障害者問題連続講座第2回・第3回の報告 就労支援制度の見直し、現場からの発信 第2回「就労支援の現場、何が起こっているのか 豊能北障害保健福祉圏域(箕面市等)と近隣の就業・生活支援センターでの取り組み」  講師 井上正治氏  すいた障がい者就業・生活支援センター センター長  畑野亮平氏  とよなか障害者就業・生活支援センター 主任就労支援ワーカー 内藤恵子氏  豊能北障害者就業・生活支援センター 主任就労支援ワーカー 進行 下司良一氏  一般財団法人箕面市障害者事業団 就労支援課長 平成27(2015)年2月20日に開催した第2回の講座には、111名の方に参加していただいた。 講座の内容は下記の通りであった。 ■障害者就業・生活支援センターについて(井上氏より) 就業・生活支援センターの目的は、「障害者の職業生活における自立を図る」ことである。 現在、大阪府内に18センターあり、基本的には居住地を担当するセンターに登録する。 支援の内容は、登録者の状態に合わせて、継続的な相談、ハローワークへの同行、実習機会の提供、雇用後の職場訪問や相談、関係機関との調整、離職から再就職までの支援などを行う。 生活支援も行うが、あくまで「就職に向けて」「就労の継続のため」という目的の場合のみ行う。 ■各センターでの取り組み 1.すいた障害者就業・生活支援センターより ・「小さいころに何になりたかったか」「それはどうしてか」ということをしっかり聞き取り、「その人がどんなことを大事にして生きてきたか」ということを大事にしている。すべてがかなうわけではないが、なるべく本人がもともと思っていたことに関連付けられるようにしている。 ・障害者雇用率に算定できない、週に3時間という短時間で障害者を雇用している企業もある。 ・働く障害者を末永く支援していくためには、「つなぎ」の役割をする機関が必要だと考える。 2.とよなか障害者就業・生活支援センターより ・新規の相談者が多く来られるので、相談者、支援者ともに緊張とストレスを感じやすくなる。いい支援を提供するための、「楽しく働けるスタッフ集団」を意識している。 ・在職者を対象として、年に4回の勉強会を、さらに年4回のレクリエーションを開催している。働き続けるためには、余暇も大事だと考えている。勉強会では、詐欺被害防止や着こなしなどの講座を、レクリエーションではバーベキューや、ホテルでの忘年会などを実施した。 ・支援学校の生徒に対して講座や実習の機会を提供するなどして、中等部や高等部1年の段階から支援学校と連携をできるようにしている。 3.豊能北障害者就業・生活支援センターより ・常に、相談者本人の思いと自己決定を重視して相談に取り組んでいる。ケース会議などでも、周囲の人間や支援者だけで決めないように気をつけている。 ・会社への通勤は難しいが、パソコン利用のスキルがある方で、在宅での就労を実現した方もいる。 ■企業の事例など 精神障害のある方に対して、定期的な面談を行い、業務面への配慮だけでなく人間関係についても配慮をしていただける企業もある。 また、定期的な産業医との定期面談機会を提供している企業もある。 第3回「自立支援法、総合支援法を通じて、就労移行支援事業は何をなしえたのか、また何をなすべきなのか」 講師 志賀利一氏 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 事業企画局研究部長 平成27(2015)年3月20日に開催した第3回の講座には、63名の方に参加していただいた。 講座の内容は以下の通りであった。 ■福祉的就労の現状と問題点 戦後生まれた福祉的就労は、現在、「就労移行支援事業」「就労継続支援事業A型」「就労継続支援事業B型」「地域活動支援センター」という制度に分かれている。   1.低い平均工賃、2.低い福祉から一般就労への移行率、3.労働施策と福祉施策の分立、の3つの問題点がある。 1.の問題について、就労継続支援事業B型の工賃については、上昇しつつあるものの、工賃アップを目指す事業所と目指さない事業所がはっきりしてきている。 就労継続支援事業A型については、B型に比べると工賃が高いものの、自立生活に十分とはいえない。 2.の問題については、就労移行支援事業所の成果は一定に上がっているものの、就労者を出せない事業所や、就職後のフォローアップを誰が行うか、一般就労の基準があいまい、などの課題がある。 3.の問題については、就労でも介護でもない障害福祉サービスについてどうするのか、所得保障はどうするのか、ということについてはいろいろな意見があるが、まとまっていない状況である。 ■企業等における障害者雇用の現状 2004年前後から、民間企業の障害者雇用は順調に増加している。 特に、従業員数が1,000人を超える規模の企業については、すでに法定雇用率の2.0パーセントを超えており、全雇用者に占める割合も多い。 また、特例子会社は300社(※)を超えるまでに増加し、そこで働く障害者も増加している。 就労継続支援事業A型事業所で雇用契約を結んで働いていて、就業時間が週20時間以上の人も雇用率に算定される。 その数は、民間雇用率の数字に影響を与えるくらいまで増加している。 民間企業ではたらいている障害者のうち、最も多いのは身体障害者であり、次いで知的障害者、精神障害者の順である。 公的機関では、身体障害者の割合は更に高くなる。 現在、就労中に病気などで障害者となった人よりも、障害者雇用として新規に雇用される人が多くなっている。 法律で定められる障害者雇用率を計算するときの分母となる常用労働者数は、少子高齢化にともない減少することが予想される。 それに対して、分子となる障害者数に、平成30年より精神障害者も含まれることになる。 つまり、法律で定める障害者雇用率が上昇することが予想される。 日本の20歳から64歳の人口に占める障害者手帳所持者の割合は、2.5パーセントであり、障害者雇用率と手帳所持者の割合が、非常に近づいてくることとなる。 ■新しい課題 今後、精神疾患や発達障害などで新たに手帳を取得し、相談の窓口に来られる方も増えてくると思われるが、従来から障害福祉に携わってきた支援機関は、これらの方たちへの支援のノウハウは持ち合わせていないと思われる。 今後、これらの方への就労支援をだれがどのように行っていくかということは重要な課題であり、新しいタイプの就労移行支援事業所が発展し、担っていくことになると思われる。 (※2015年3月のご講演時点での数字。2015年11月現在では400社近くになっているもの。) (文責:箕面市障害者事業団) 事業団日誌 4月からリサイクル部門の担当となりました。 昨年は緑化推進部門(瀬川)を担当していました。 今年で入職して2年目になります。 今回は、私が担当している業務や日々感じていることなどについてご紹介させて頂きたいと思います。 リサイクルセンターは、勝尾寺近くの箕面市立クリーンセンター内にあり、大半の職員は、送迎車で通勤しています。 私も送迎車の運転から1日が始まります。 稲の本部から20分程で到着。 朝は建物の開錠や、保管している缶や瓶を職員と確認して「まだ多いなあ」「だいぶ進んだなあ」などと話ながら作業の準備にとりかかります。 午前9時から朝礼を行い、連絡事項や各自の担当を確認します。 作業は、市内から収集された缶や瓶を資源として再利用するための選別作業とリサイクルセンターの建物を清掃する仕事があります。 昨年からは、リサイクルできる品物を福祉事業所で利用していただく事業も開始しました。 いずれの業務も立ち仕事ですので、一定の体力や集中力が必要です。 疲れも出ますが、皆で励ましあいながら、安全に気を付けて仕事を行っています。 午後4時30分には、作業が終了。 送迎をし、事務を行い、1日の仕事が終了となります。 私の仕事の中心は、現場で職員が働きやすい環境を作っていくことです。 とはいっても大変難しいことなのですが・・・障害者職員は、それぞれ個性や特性の違いがありますので、対応の仕方には、これで良いというやり方はありません。 本人や周りの方の話も参考にさせてもらいながら、職員との関わりを大事にしたいと思っています。 職員間でトラブルが起こることもありますが、その事象だけを見るのでなく、なぜそうなったのかを考え、当事者や周囲がどう感じたのかを聞き取ることも解決の糸口の一つになると感じています。 具体的には、現場の作業に入る日もあれば、庶務を行う日もあります。 これらを怠ると大事なお給料にも影響しますから、着実な事務が必要です。 また、障害者職員には無期雇用の1号職員と有期雇用の3号職員にわかれます。 3号職員は、最長5年の契約期間になりますので、次のステップに向けて就労先をご本人と一緒に探すため、合同面接会やハローワークへの同行、実習や見学先の照会などの業務も行っているところです。 最後になりましたが、障害がある方と一緒に働く職場にいることは、やりがいがある反面、その支援の難しさを感じることも多くあります。 来年4月から「障害者差別解消法」が施行されることもあり、今後は、障害者職員との関わり方にも、より、周囲の職員へ配慮や理解も求めていくことも大切だと改めて感じています。 私たちは、指導役ではなく、働く上でできにくい事や配慮がいる点をみつけ、それらを支援する職員であり、対等な関係の同僚職員として、その呼称や仕事への指示の仕方に工夫が必要と考えているところです。 (池内) 西へ東へ 企業在籍型職場適応援助者養成研修へ参加してきました。 企業在籍型職場適応援助者と聞いて、「何だろう?」と思われる方もおられるかもしれません。 以前は、第1号職場適応援助者・第2号職場適応援助者と呼ばれていたものが、今年度から制度が変わり、第1号イコール訪問型・第2号イコール企業在籍型となりました。 私が担当する事業課では、公園花壇等の緑化管理や喫茶店運営、缶や瓶の選別業務などの各部門で、計19名の障害者職員が活躍しています。 その19名が仕事場面でより活躍するためには、たとえば20歳代前半で勤続1年目の職員は、社会人としてのマナーや業務習得の支援、40歳代半ばから50歳代半ばで勤続20年を超える職員たちは、加齢等による能力低下にかかる支援など、個々に合わせた支援が必要です。そのため、より専門的な支援方法や障害特性などをあらためて学ぶため、養成研修に参加しました。 1日平均8時間、6日間にも及ぶボリュームのある研修で、私は大阪での受講でしたが、西は大分県から東は東京、訪問型には就労移行支援などを行なう法・企業の方や障害者就業・生活支援センターの方、在籍型には特例子会社や企業等で障害者とともに働いている方や人事担当者など、立場の違う計54名が参加されていました。 制度や支援方法、障害特性について学んだことももちろん、ケーススタディーやディスカッションを通じて、様々な受講者たちと意見交換を行ない、障害者の働くを支える仲間たちとともに学び、本当に有意義な研修でした。 今回の研修で学んだことを、企業在籍型職場適応援助者として、日々の支援に生かしていきます。 余談ですが、会場の天満橋周辺は飲食店も多く、受講生のみなさんと出かけた昼食や、最終日にはみなで自然と居酒屋へ・・・。 そこでも研修の延長戦のような雰囲気でディスカッションが続く場面もあり、それも楽しみのひとつとなっていました。 (事業課:野村達也) 【お知らせ】 3ページに記載のとおり、「相談るうぷ」にて計画相談(指定特定相談支援)を開始しました。 ■指定特定相談支援とは 障害のある方からの相談に応じ、障害福祉サービスを利用するために必要な「サービス等利用計画」を作成します。 ■対象となる方 福祉サービスの利用を希望されている障害のある方が対象となります。 ■サービスの提供地域 箕面市にお住まいの方 ※箕面市外の方からの相談をお受けすることもできますが、交通費をいただく場合があります。 ■費用 相談には自己負担はありません。 ■営業時間 月曜日から金曜日   午前9時15分から午後5時 ※ただし、祝祭日、12月29日から1月3日までをのぞきます。 ■利用方法 まずは、お電話で相談の予約をお願いします。 ■連絡先 電話:072・724・3384 ファックス:027・724・3383 住所:郵便番号562-0015 大阪府箕面市稲1-11-2 ふれあい就労支援センター4階 【編集後記】 「マイナンバー制度」がはじまります。 事業団でも年金や税金手続き等で利用が必要なために、職員からマイナンバーをお知らせいただくことになっています。 先日の報道では、マイナンバーはみだりに他人に教えられない個人情報ですが、通知カードの番号には点字表記がなく、視覚障害のある人は、誰かに読み上げてもらう等の必要があるとのことでした。 今後、この制度が実際に活用されていくにあたり、障害のある人が暮らしていく上で、マイナンバー制度が新たなバリア(障害)となってしまうことのないように、その運用を考えていく必要があると感じています。 (秦) KSKQ 障害者事業団だより ナンバー49 発行日/2015年12月8日 編集人/一般財団法人箕面市障害者事業団(理事長 岡 猛博) 郵便番号562-0015 大阪府箕面市稲1-11-2 ふれあい就労支援センター4階 TEL 072・723・1210 FAX 072・724・3383 ホームページhttp://www.minoh-loop.net/ Eメールinfo@minoh-loop.net